Network Research Studies 海外研究拠点のご紹介
長崎大学 ベトナム拠点
デング熱、人獣共通感染症、下痢・呼吸器感染症などの基礎・臨床疫学研究の推進
長崎大学熱帯医学研究所附属アジア・アフリカ感染症研究施設ベトナムプロジェクト拠点は、2006年にハノイの国立衛生疫学研究所（NIHE）の敷地内に設置された海外研究拠点です。ベトナムを中心に様々なプログラムを実施する研究施設としての役割を担い、感染症に関わる知の集積・発信及び人材の育成を目標として活動しています。研究以外の面においても、熱帯医学や国際保健を志す若手研究者や大学院生、学部学生のOn-the-Job-Trainingの場として活用され、日本にもベトナムにも開かれた環境を提供しています。
また、ニャチャンパスツール研究所内に分室を設置しているほか、国立国際医療研究センターが副拠点としてハノイ市にあるバクマイ病院と連携して薬剤耐性菌の研究を行っています。
現在は下記対象感染症について、原因となる病原体のゲノム解析・性状解析や検体に存在する新規ウイルスの探索、また臨床情報を用いた疫学的研究を行っています。
対象感染症
・蚊媒介ウイルス感染症（デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、日本脳炎等）
・呼吸器ウイルス感染症（COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症等）
・腸管ウイルス感染症（ノロウイルス感染症、ロタウイルス感染症、エンテロウイルス感染症等）
・人獣共通ウイルス感染症（ニパウイルス感染症、ハンタウイルス感染症、狂犬病等）
・下痢起因細菌（ビブリオ属細菌、病原性大腸菌等）
保有サンプル
・ヒト血清（発熱患者、野生動物接触者等）
・ヒト鼻腔スワブ検体（呼吸器感染症患者）
・ヒト便検体（下痢症患者）
・動物血清（コウモリ、ネズミ等）
・動物臓器検体（コウモリ、ネズミ等）
・動物便検体（ブタ、家禽、ウシ等）
・環境検体（河川水、下水等）
主要論文・実績
- Hoa-Tran et al. Evolution of DS-1-like G8P[8] rotavirus A strains from Vietnamese children with acute gastroenteritis (2014-21): Adaptation and loss of animal rotavirus-derived genes during human-to-human spread. Virus Evol. 2024;10(1):veae045
- Fraenkel et al. The development of new primer sets for the amplification and sequencing of the envelope gene of all Dengue virus serotypes. Microorganisms. 2024;12(6):1092.
- Nguyen et al. Pre-existing cross-reactive neutralizing activity against SARS-CoV-2 and seasonal coronaviruses prior to the COVID-19 pandemic (2014-2019) with limited immunity against recent emerging SARS-CoV-2 variants, Vietnam. Int J Infect Dis. 2024;139:109-117.
- Nabeshima et al. An outbreak of a novel lineage of dengue virus 2 in Vietnam in 2022. J Med Virol. 2023;95(11):e29255.
- Nguyen et al. Serological and molecular epidemiology of Chikungunya virus infection in Vietnam, 2017-2019. Viruses. 2023;15(10):2065.
- Iguchi et al. Genomic characterization of endemic diarrheagenic Escherichia coli and Escherichia albertii from infants with diarrhea in Vietnam. PLoS Negl Trop Dis. 2023;17(4):e0011259.
- Takemura et al. The 2017 Dengue virus 1 outbreak in northern Vietnam was caused by a locally circulating virus group. Trop Med Health. 2022;50(1):3.
拠点長から一言
長崎大学熱帯医学研究所とベトナム国立衛生疫学研究所（NIHE）との最初の共同研究が実施されたのは、1985年のことです。それ以来、熱帯医学研究所はNIHEとの約40年に及ぶ協働関係にあり、2006年にはNIHE内にプロジェクト拠点を設置し、特に熱帯医学の分野で長くベトナムでの共同研究を続けてきています。
拠点内には次世代シークエンサーを始め最先端の解析機器がそろっており、またNIHE内には日本の無償援助により設置されたBSL3実験室があります。さらに、これまで培われた強固な信頼関係により、検体採取や解析においてNIHEの強力な支援を得ることができ、感染症研究に適した環境が整っています。
近年は、 文科省共同利用・共同研究拠点（長崎大学熱帯医学研究拠点）事業やAMED新興・再興感染症研究基盤創生事業（海外拠点活用研究領域）の支援による多くのプロジェクトでベトナム拠点が利用されており、ベトナム拠点の研究拠点としての重要性が高まりつつあります。ベトナム拠点を利用した研究に興味がある方は、ぜひご一報いただければと思います。
研究代表者 もしくは 拠点長名：長谷部 太
役職：長崎大学 熱帯医学研究所 教授
学位 ：獣医学修士、 博士（医学）（長崎大学医学研究科）
経歴
| 山形県生まれ。麻布大学大学院獣医学修士修了後、1986年にザンビア共和国に渡り、ザンビア大学獣医学部の助手をしながらリフトバレー熱や牛のブルセラ症といった人獣共通感染症研究を行う。1993年から長崎大学熱帯医学研究所に勤務。2007年よりベトナムで蚊媒介性ウイルスやコウモリ由来の新興感染症の分子疫学調査を行っている。 |
