Network Research Studies 海外研究拠点のご紹介
新潟大学 ミャンマー拠点
アジアの空白地帯解消に向けた呼吸器感染症サーベイランスと分子疫学解析の推進
新潟大学は2000年にミャンマーへの医療協力を開始し、2004年からはヤンゴン市内の医療機関でのインフルエンザ・サーベイランスに取り組んできました。その後、2015年にJ-GRIDプログラムによりミャンマーに海外拠点を国立衛生研究所(NHL)に設置し、20年余に亘り呼吸器感染症を中心にした共同研究、国費留学生のリクルートや若手研究者の育成に取り組んでいます。
ミャンマーでは新型コロナと政変の影響で、多くの教育機関や病院ではスタッフの離脱や医療環境の悪化にも関わらず、私達との協力関係を維持してくれており、感染症の空白地帯とも称されるミャンマーでの活動を続けています。対象感染症としては呼吸器感染症（インフルエンザウイルス、RSウイルス、SARS-CoV-2、ライノウイルス）、小児髄膜脳炎（エンテロウイルス-D68、パレコウイルスA）、小児重症下痢症（ロタウイルス）などを扱っています。また、保有サンプルは呼吸器感染症研究のためにヒト鼻咽頭拭い液や医療従事者の血清、小児下痢便検体などを保有しています。
主要論文・実績
- Whole-Genome Analysis of the Influenza A(H1N1)pdm09 Viruses Isolated from Influenza-like Illness Outpatients in Myanmar and Community-Acquired Oseltamivir-Resistant Strains Present from 2015 to 2019. Viruses. 15 August 2024. https://doi.org/10.3390/v16081300
- Detection of influenza A(H3N2) viruses with polymerase acidic subunit substitutions after and prior to baloxavir marboxil treatment during the 2022-2023 influenza season in Japan. Antiviral Research. 4 July 2024. doi: 10.1016/j.antiviral.2024.105956
- Detection of enterovirus D68 among children with severe acute respiratory infection in Myanmar. J Microbiol Immunol Infect. 2024 Jan 5:S1684-1182(24)00002-1.
- Molecular Epidemiology of Respiratory Syncytial Virus during 2019-2022 and Surviving Genotypes after the COVID-19 Pandemic in Japan. Viruses. 2023 Dec 4;15(12):2382.
- Detection of parechovirus-A in hospitalized children with acute lower respiratory infection in Myanmar, 2017-2018. J Med Virol. 2023 Jul;95(7):e28964.
- Whole-Genome Analysis of Influenza A(H3N2) and B/Victoria Viruses Detected in Myanmar during the COVID-19 Pandemic in 2021 Viruses. 2023 Feb 20;15(2):583. doi: 10.3390/v15020583.
- Epidemiology and Genetic Analysis of SARS-CoV-2 in Myanmar during the Community Outbreaks in 2020. Viruses. 2022 Jan 27;14(2):259. doi: 10.3390/v14020259.
研究代表者より一言
東南アジア諸国や中国、インドと国境を接するミャンマーは、新しい病原体による感染症の影響を受けやすい地域であり、2020年の新型コロナウイルスパンデミックと政変により、多くの海外プロジェクトが撤退するなど、ミャンマーの脆弱な医療・研究体制に壊滅的な影響を与えました。しかし、私たちは長年の間に培った強固な信頼関係と現地共同研究者の高い研究意欲により、研究活動を継続しています。ASEAN諸国内での感染症研究の空白地帯を解消すると共に、アジアの他の研究拠点との情報共有を加速することにより、新興・再興感染症病原体の日本への感染伝播を監視していきます。
研究代表者 もしくは 拠点長名：齋藤 玲子
役職：新潟大学 教授
学位 ：医学博士
（新潟大学大学院医歯学総合研究科)）
経歴
| 2011/04-現在 | 新潟大学大学院医歯学総合研究科 国際保健分野(公衆衛生) 教授 |
|---|---|
| 2008/04-2011/03 | 新潟大学大学院医歯学系 公衆衛生学 講師 |
