Network Research Studies 海外研究拠点のご紹介

東北大学　フィリピン拠点

フィリピン研究拠点における感染症国際共同研究

東北大学は公衆衛生の観点よりフィリピンでの持続可能な感染制御プログラムを確立するため、病原体の特定や疫学的解析をフィリピン熱帯医学研究所（RITM）や州立病院などに所属する現地の研究者と共同で実施しています。

RITMは、1979年日本国政府とフィリピン国政府の間で熱帯医学研究所の設立に関する合意書が交わされた後、1981年JICAによって設立されました。当初研究棟と50床の病棟が建てられ、後に動物研究施設（1984年）、熱帯感染症研究のトレーニングセンター（1989年）、さらに2002年にはNational Tuberculosis Reference Laboratoryも加わり、フィリピン国内の医療従事者に対するトレーニングやワークショップなどを開催できるキャパシティーができました。

本拠点における共同研究では、主な対象感染症として小児呼吸器感染症（RSウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、ヒューマンメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ヒトコロナウイルス）や小児下痢症（ノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス）を扱っています。

主要論文・実績

Molecular Characterization of Respiratory Syncytial Virus in Children with Repeated Infections with Subgroup B in the Philippines. J Infect Dis. 2018 Aug 24;218(7):1045-1053. doi: 10.1093/infdis/jiy256.
Comparison of Rhinovirus A–, B–, and C–Associated Respiratory Tract Illness Severity Based on the 5′-Untranslated Region Among Children Younger Than 5 Years. Open Forum Infect Dis. 2022 Oct;9(10) doi.org/10.1093/ofid/ofac387
Incidence of lower respiratory tract infection and associated viruses in a birth cohort in the Philippines. BMC Infect Dis. 2022 Mar 30;22(1):313. doi: 10.1186/s12879-022-07289-3.
Genetic diversity of species A rotaviruses detected in clinical and environmental samples, including porcine-like rotaviruses from hospitalized children in the Philippines. Infect Genet Evol. 2020. Nov;85:104465. doi: 10.1016/j.meegid.2020.104465.

研究開発代表者から一言

フィリピンにおいては感染症が保健衛生分野の最大の問題であるにもかかわらず、その実態が把握されていないという現実があります。本拠点で得られた成果は、今後フィリピンが持続可能な感染症対策を確立するのに大きく貢献するものと期待されます。さらに、これらの成果は国際機関等を通して他の途上国へも応用可能なものです。また、本拠点では若手研究者に研究プロジェクトの中心的な役割を担わせており、彼らが将来、世界の感染症対策のリーダーとなることが期待されます。

http://www.virology.med.tohoku.ac.jp/ja/index.html

研究代表者　もしくは　拠点長名：押谷仁

役職：東北大学大学院医学系研究科教授

学位：医学博士
(東北大学大学院医学系研究科) 　

経歴

2005/09 - 現在	東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授
1999/08 - 2005/12	WHO西太平洋地域事務局 Regional Adviser
1998/01 - 1999/08	新潟大学医学部助手/講師