Network Research Studies 海外研究拠点のご紹介
大阪大学 タイ拠点
日本・タイ感染症共同研究拠点における新興・再興感染症の基礎研究の推進
大阪大学微生物病研究所は、1958年以来、タイ王国の研究機関・大学と研究・教育活動を通じて交流を行ってまいりました。
特にタイ保健省医科学局傘下の国立予防衛生研究所とは、強い人的交流を築いてきました。タイ拠点は2005年に同局から約600㎡のスペースの提供を受け、BSL2およびBSL3対応の実験室、ならびに事務室および居室を設営しています。最近では、同省疾病管理局疫学部門とも連携しながら、タイ国内の感染症研究を実施しています。
当拠点が主に研究対象としている感染症は下痢症（コレラ菌、赤痢菌、サルモネラ菌、ノロウイルス、ロタウイルスなど)および蚊媒介性ウイルス感染症（デングウイルス、チクングニヤウイルスなど）です。拠点設立の2005年から腸管感染症病原細菌を多数収集しており、検査法の開発や基礎研究に活用しています。また、タイ国内で発生する下痢症アウトブレイク調査を、全国の保健機関と連携して実施し、各地から送られてくる便検体から病原体を検出・解析しています。これにより重要な病原体の早期検知や感染拡大の防止、さらに効果的な感染症対策に寄与するよう努めています。蚊媒介性ウイルス感染症に関しては、デングウイルス流行地域や森林地帯において、現地研究者と協力し、多様な蚊媒介性ウイルスの分離を目的として、蚊サンプルの採集を行っています。また、患者検体や健常者検体における蚊媒介性ウイルス感染症の血清疫学調査を行っています。
主要論文・実績
- First recorded food-borne outbreak of gastroenteritis caused by enteroinvasive Escherichia coli serotype O8:H19 in Thailand. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. In press.
- Genetic regions affecting the replication and pathogenicity of dengue virus type 2. PLoS Negl Trop Dis, 2024 Jan 8;18(1):e0011885.
- Flagella-related gene mutations in Vibrio cholerae during extended cultivation in nutrient-limited media impair cell motility and prolong culturability. mSystems, 2023 Oct 26;8(5):e0010923.
- Spatiotemporal variation in risk of Shigella infection in childhood: A global risk mapping and prediction model using individual participant data. Lancet Glob Health. 2023 Mar;11(3):e373-e384.
- Emergence of Vibrio parahaemolyticus serotype O10:K4 in Thailand. Microbiol Immunol. 2023 Apr;67(4):201-203.
- Seroprevalence of Flavivirus Neutralizing Antibodies in Thailand by High-Throughput Neutralization Assay: Endemic Circulation of Zika Virus before 2012. mSphere. 2021 Aug 25;6(4):e0033921.
- Etiologic features of diarrheagenic microbes in stool specimens from patients with acute diarrhea in Thailand. Sci Rep. 2020 Mar 4;10(1):4009.
- Key Amino Acid Substitution for Infection-Enhancing Activity-Free Designer Dengue Vaccines. iScience. 2019 Mar 29:13:125-137.
拠点長から一言
大阪大学は、半世紀以上にわたりタイ国内の研究機関や大学と交流を続けており、多くのタイ人研究者が当大学で学位を取得しています。タイ拠点では、現地に根ざした研究を展開し、信頼関係を築いてきました。タイ国の感染症対策における国家機関である医科学局や疾病管理局と連携し、タイで発生するアウトブレイク等の調査を実施しています。拠点設置機関と緊密に連携し、アジアの感染症に関する諸問題を解決するために、多くの研究者の参画を求めています。
研究代表者 もしくは 拠点長名：飯田 哲也
役職：大阪大学 教授
学位 ：医学博士
(大阪大学微生物病研究所)
経歴
| 2015/04 - 現在 | 大阪大学 微生物病研究所 細菌感染分野 教授 |
|---|---|
| 2005/12 - 2015/03 | 大阪大学 微生物病研究所 感染症国際研究センター 特任教授 |
